差別化された求人を作るために考えるべきポイント

売り手市場とは、採用をしたいと思っている企業の数(需要量)に対して、転職者の数(供給量)が少ない状態です。
つまり、転職者一人に対しての求人数が多い状態です。市場価値が高い人ほど多くの求人スカウトを受け、中には一日に100社以上のアプローチは受けている方もいます。

したがって、圧倒的な知名度やブランドイメージを持つ一部の企業以外では、母集団形成のためには「求人の差別化」が非常に重要です。
しかしながら、差別化について体系化されているマーケティングと異なり、採用における求人の差別化については、具体的なノウハウが乏しい状況です。
「どうすれば自社の求人を差別化できるのか」「そもそも差別化できる材料がない」といった相談を日々いただきます。

求人の差別化については、当社のように数多くの求人票に日々触れている採用コンサルティング会社や人材紹介会社が得意な領域です。今回のコラムでは実際に求人の差別化を行う上でのポイントについて、実際にあった事例を元に解説します。

目次

採用領域における求人の差別化について

マーケティングにおける差別化戦略とは、他社との差別化を図ることで競争優位を実現する戦略で、ハーバード大学ビジネススクールのマイケル・ポーター教授により競争優位を築く基本戦略の1つとして提唱されました。
他社が持たない自社製品独自の機能や品質、ブランドイメージ、顧客サービス等をマーケットにアピールすることによって競争優位を築く戦略です。

採用領域におけるマーケットは、転職市場となります。
自社が属する業界や募集する職種、採用ターゲットによって、マーケットはより限定され、その限定されたマーケットの中でどのように他社が持たないポイントをアピールするか、考える必要があります。
マーケティングでは価格(コスト)も競争優位戦略の一つですが、採用活動においては、提示年収レンジを採用担当者が自由に調整することは難しいため、差別化戦略が重要です。
ゆえに、求人として他社が持たない打ち出しポイントをアピールし、差別化出来ている状態を実現することで、多少の年収差がある競合求人に対しても優位なポジションを築くことが可能になります。

求人の差別化事例(建築系設計エンジニア募集のケース)

埼玉県を本社とする社員数15名、設立10年の設計事務所の具体的な事例を紹介します。

同社では若手の建築系の設計エンジニアを募集していました。採用ターゲットは「建築士の資格保有者×若手」と建築業界では多くの企業が採用したいと考えるいわゆる「売り手」のゾーンです。
募集開始時の求人倍率は20倍以上、大手ゼネコンやディベロッパー、ハウスメーカーはもれなく採用を行っており大手人材会社の求人サイトでは200社以上の求人が公開されていました。そのようなマーケット環境により、同社への応募は採用開始から数ヶ月経ってゼロという状況でした。

同社の求人票は採用担当者が熱心に作成したもので、かなり具体的な内容が入った職務内容、定量的なデータを使った働きやすさの記載があり、必要な情報は盛り込まれた「良い求人」でした。
しかしながら、数多く存在している他社の求人と比較してユニークな情報はなく「差別化された求人」ではありませんでした。
ポジションの特性上、資格要件の緩和は出来ない。さらに採用のリソースが不足していることから新たなチャネルを増やすことも難しい状況であっため、求人の差別化に着手しました。

ポイント① 競合の求人を見て打ち出しているポイントを知る

まずは競合となる他社求人を一通り分析しました。具体的にはリクナビやDODAといった大手求人サイトや競合の中途採用ホームページを見て、どのような打ち出しを行っているかを調べました。
実際にこのような分析を行ったことがある方は分かると思いますが、建築業界であれば働きやすさ、ベンチャーであれば資金調達金額や代表のバックグラウンドなど、業界や職種、事業フェーズによって各社が打ち出しているポイントは非常に似通っています。
もし競合が分からない、ということであれば取引している人材紹介会社の担当営業に聞いてみましょう。

本事例のケースでは分析の結果、他社の打ち出すポイントには下記の共通項があることが判明しました。

他社求人の多くが打ち出しているポイント

・残業時間の少なさ
・自社が設計に携わったことがある建物の事例

ポイント② 自社独自の打ち出しポイントを探す/◯◯にもかかわらず〇〇

上記(ポイント①)で挙げた他社の打ち出しポイントは、一般的に建築系の設計エンジニアが応募時に確認したい内容であり、求人票には記載すべき内容です。
ただ、同じことを記載のみでは差別化できませんし、知名度勝負になってしまいます。上記以外で打ち出せるポイントがないか考えますが、自社独自の打ち出しポイントを見つけることはやってみるとかなり難しいです。
そんなときには「AにもかかわらずB」という言葉に当てはめて考えてみましょう。
「にもかかわらず」は前述の状況から穏当に導かれる結果とは異なる状況へ事が進んだことを示す際に用いられる連語表現です。

一般的に予想される内容ではないという点にこそ、求人の差別化のポイントがあります。

(例)
・社長が70歳と年齢が高いにも関わらず、ITサービスへの投資に積極的で常に生産性の向上に取り組んでいる
・設立5年のベンチャーで組織が急拡大しているに関わらず、離職者が発生しておらず社員が定着している。
・外資系企業であるにも関わらず、内部昇格者が多く、経営陣の8割はプロパー入社組である

このように自社が置かれた環境を整理し、「AにもかかわらずB」というポイントがないか考えてみましょう。
そういった状況が起きている背景や理由もまた、差別化のポイントになります。

本事例のケースでは、上記の考え方で検討した結果、下記のポイントが出てきました。

同社求人特有の打ち出しポイント

・設計事務所であるにも関わらず、デザイナーが社員の半数以上(7名)いる。
→ デザイナーの多くは元々設計エンジニアとして入社していて、入社後にデザイナー業務を学び業務の幅を広げている。また、設計エンジニアがデザインを学ぶ環境や費用を会社が提供している。

・15名という小さな企業ではあるが、ダイバーシティを意識した経営を行っており、社員は多国籍でフランスとカナダ出身の社員がいる。
→ 社長が元々大手ディベロッパーで海外駐在が長く、海外企業の取引先も多い。

ポイント③ 打ち出すポイントは転職希望者が求める情報であるかチェックする

差別化した結果、応募が集まらなければ意味がありませんので、「打ち出すポイントは転職者が求める情報であるか」は最後にチェックしましょう。
本事例において上記に挙げた打ち出しポイントは、競合企業が打ち出していないポイントであり、かつ転職希望者が求める情報の一つであることから、明確な求人の差別化に繋がりました。

結果、「将来的には意匠デザインに携わりたい」「海外留学経験があり日常的に英語を使いたい」といった若手の設計エンジニアの募集があり、無事採用に成功しました。


いかがでしたでしょうか?今回は、自社求人の差別化についてまとめました。
競合他社の求人を分析したり、他社と比べた自社求人のユニークなポイントについて考えることは、疎かにしがちですが非常に重要です。

求人票は転職希望者や人材会社の営業やキャリアカウンセラーなど多くの人が見るものです。
今回の内容は、少しの改善によってコストをかけずに採用活動が前進する内容です。ぜひとも実行してみてください。

よかったらシェアしてね!
目次
閉じる